父の叔母→母
わたしは両親のハネムーンベイビーだったようで、結婚して間もなく母の妊娠が判り、出産予定日がよく言われる十月十日(実際には9ヶ月と少し)に満たなかったため、おばあさんから母は「結婚前に“仕込んだ”んだろう」と言われたそうです。
両親が結婚した当初は、未婚だった父の姉と弟がまだ同居していて、それぞれ仕事に行っていたそうです。妊娠初期に母の体調が悪く、父を職場に送り出した後で布団に横になっていると、同じ敷地に住んでいたおばあさんが見に来ては「いつまでも寝ていて、早起きして仕事に行くTちゃん(父の姉)が可哀相だ。」というようなことを言ったり、家の外壁に物干し竿を強くぶつけられたこともあったと母は言っていました。
父の叔父夫婦には子供がいなかったので、おばあさんは独身の姪Tちゃんは娘のように可愛がっていたようですが、母はあくまでも息子(代わり)の嫁であり、しかも嫁に来て早々妊娠していたことが羨ましかったのかも知れません。
母が亡くなった後で父から聞いた話によると、わたしがお腹にいる時に母は卵巣脳腫の手術を受けていて、医師からは母体の安全のために中絶を勧められたそうですが、母はどうしても産みたいと言って、わたしをこの世に送り出してくれたのでした。